◎ 8月9日(土)午後3時〜5時「創作するということについて」
演出家 山田和也氏  音楽家 川崎晴美氏

  [前半、山田氏おひとりでのトーク。後半、川崎氏を交えての対談という構成。]

〜 山田さんのテーマ曲 〜

「わたしは勝つ」(「シンデレラ・ストーリー」より)
作曲:武部聡志 作詞:斉藤由貴


山田 「最初から演出家になりたいという野心は全くなかった。東宝に入社し、自分のやりたいことは何かと悩む時期もあったが、芝居をやってメシを食うということにこだわって3年位経った時、急に面白くなり始めた。有名俳優と作る何十人もの人々が関わる億単位のバジェットが動く高水準な現場にいること。ダイナミックに動くシステムが見えた時、面白さがやっと実感できてきた。
全体像が見えてくると、次の段階で中期的な目標が出来てくる。そうするとやりがいみたいなものが生まれてくる。後輩も出来てくる。また、自分の力でつくり変えることも出来てくる。そして、プロとして磨かれていく。」
山田 「自分のやりたいことを職業にするには、経済的に自立出来ることをまず選び、内容はその後から充実させていく。もうひとつは、自分を信じて自分オリジナルのものを作り続けること。それが本当に本物であれば世間は認めてくれる。そのどっちかじゃないかな。」
山田 「私は幸運なんですが、何がなんでもこれを成し遂げるんだという枷を課すのではなく、ストレスがないスタートがきれたという、何となく始まったというのが、自分には無理がない状態で良かったかなと。」
山田 「「海馬」という本にあったのですが、脳の側坐核という箇所は人間のやる気を刺激するところ。そこを刺激するにはまずやってみる。今日はやりたくないなーと思っても、やってるうちにやる気がでてくる。ものを作るというのはそういうことじゃないかな。だめもとでやってみる、やっているうちに何かが見えてくる、やっていることが次につながっていく、つながっていくことが新たなものにつながっていく。」
山田 「意識的にブレーンを変えていく。共通の言語を探し、また、自分の知らなかったことを教わることがある。新しい人とゼロから仕事をするのは、リスクがあるし勇気もいるし根気もいるし面倒だし結果がでないかもしれないし。でも、得ることの方が断然多い。」
山田 「待っていてもチャンスはやってこない。まずは、積極的に動き熱意を示す。熱意に見合う実力を与えられた場で発揮する。そして、それを、継続していく。」
山田 「モラルある作品。節度ある作品を作りたい。その作品の世界にきちんとモラルがあるという。一番に考えているのは実はそこなんです。」


〜 川崎さんのテーマ曲 〜

「笑いの大学」  作曲:川崎晴美

川崎 「私はクラシックをやっていながらジャズとかロックが大好きで、ブラジルにホアン・ジルベルトという歌手がいるんだけれど、その歌手が大好きで、ホアンが活動を始めたリオにいくしかないなあと思い大学卒業後、ブラジルに留学しました。」
川崎 「私は和也さんが演出された三谷幸喜さん作「笑いの大学」でメジャーな演劇の仕事のデビューをしました。和也さんとは大学時代三谷幸喜さんたちが作られた東京サンシャインボーイズでご一緒したのが最初で、それ以来のお付き合いです。」
川崎 「芝居の音楽は限定がある。でも作り始めるとその限定ははずれてしまうんだけど、その限定がはずれたところで演出家とコミュニケーションしながら方向を定めていくという…。何秒で曲を作らなければならないというのも、かえって楽しいかな。
私にとってはひとつのきっかけになるかな。」
川崎 「曲を作る場合、直感的に浮かぶ場合もあるし、本読みの時にフットフレーズが浮かぶ場合もあるし。「バイマイセルフ」の時。主演が松本幸四郎さんで、演劇界の重鎮。だから、逆に無名性というか普遍性というか、その方が引き立つかなと。で、考えたのが口笛。ワーッと地平線が開けて少しだけ風がふいている風景をイメージ。少し何かをちょっとだけ思い出すようなエッセンスも。今取り組んでいるのがやはり幸四郎さん主演の「実を申せば」。これは、最初、幸四郎さんの代表作「ラマンチャの男」からスペインをイメージしたのだけれど、やはり強烈過ぎてちょっと唐突かなと思い、一旦作った曲を没にしました。結果、この作品は詐欺師の話なので、任侠ものをイメージしたものを完成させました。」



山田 「幸四郎さんはとても勘の良い方。音楽が流れるとその音に台詞をかぶせるように謳い上げる。ちゃんと音を聞いていらっしゃるんですよね。」
川崎
「演出家は楯になってくださる方。山田さん演出の大きなプロジェクトに参加した時私がやっていいものかどうかとっても恐かった時、プロデューサーから「才能ある山田が君がいいと推薦しているんだから全然心配することはないよ」と励ましてくれたのだけれど、あー、和也さんが裏でいろいろ言ってくださっていたのだな、と。そういう陰口はとてもありがたかった。」
山田 「信頼してその人のセンスと心中するくらいアーティストには信頼をおいています。その人が持っている才能を最大限引き出す。信頼関係がないとだめだよね。」
川崎 「演出家は増幅装置。私の作品を愛してくれると、更にもっと愛してもらいたいと感じ、もう一晩徹夜してもいいいかなと思ってしまうんです。」




  
Q.  本日の講義はいかがでしたか。ご感想・ご意見など。

自分の知らなかった舞台の話が聞けて楽しかった 舞台のヘアメイクをやってみたい
具体的な話で理解しやすかった 映画を観る時も音楽やヘアメイクがもたらす効果に注目したい   
未知の世界の裏話聞けてよかった 普段聞けない、大変興味深い話ばかりだった
「生き方」は色々あると思いますが、大変ドラマチックな人生談が聞けてよかった 
その世界の重鎮の方のお話を伺えてよかった いろんな面で参考になった
言葉の重要性を意識しました 知らない業界、考え方を知るいい機会になった 
お二人とも“人として”とても素敵な方と思いました 
お二人ともすごい柔らかい考えをしていると思った 
今の仕事で考えていることと何故か一緒になって考えさせられた 大変楽しかった 
創作する事は大変だけどやりがいのある仕事だと改めて思い感心した
創作のプロセスからプロになっていく、とにかく始めるということが印象的だった
それぞれの現場の話からショービジネス、ユーモアの話し方まで楽しい話が聞けて満足
舞台に対して理解が深まり、前より興味を持てるようになった とてもためになった
私は小劇団に関わっているので山田さんの話すごくためになった 言葉の大切さを知った
このような機会があれば参加していろんな事を吸収したい 人とのつながりを大切にしたい
普段は一般企業でOLしているのでまず全く異業種業界の話を聞けて新鮮だった 
プロになるには現場に居続ける、という最初の話がとても印象的だった 刺激になった