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 劇評347

フラットな現実世界に発破を仕掛けるパワー全開の佳品。

 
 
「秘密の花園」

2018年1月27日(土)晴れ
東京芸術劇場 シアターイースト
18時30分開演

作:唐十郎
演出:福田充則

出演:寺島しのぶ、柄本佑、玉置玲央、
川面千晶、三土幸敏、和田瑠子、
福原充則、池田鉄洋、田口トモロヲ

場 : 劇場内に入ると、昭和を彷彿とさせられるアパートの1室の美術が設えられています。かなり造り込まれていますね。このリアルさ、なかなかイイではありませんか。唐十郎の世界は、抽象的な美術ではなかなか太刀打ちできませんものね。

人 : 劇場後方には若干空席がありますね。当日券も出ているようです。男女比は半々くらいでしょうか。年齢層は40〜50歳代がアベレージでしょうか。

 アングラ世代の戯曲を掘り起こし、若手・気鋭の演出家が現代の視点で捉え直す、故扇田昭彦氏発案の“RooTS”と銘打たれた東京芸術劇場の企画は面白い。今回の演目は、本多劇場の杮落しの際、1982年に書き下ろされた、唐十郎の「秘密の花園」。演出を担うのは、出演も果たす福原充則である。

 福原充則は、唐十郎作品を独自の解釈で演出するというよりも、唐十郎が描いた作品世界を忠実に再現することに執心しているような気がする。迷うことなく唐十郎をリスペクトする福原充則の作品に対する取り組み方に、“これ”が観たかったのかもしれないと、グッと親和性が湧いてくる。

 俳優陣もまた、魅力的な逸材が集結した。初演で緑魔子が演じたヒロインは寺島しのぶが担っていく。二役を演じ分けるという難役だが、唐十郎の詩的で流麗な言霊に命を吹き込むことの困難さを、軽々と凌駕しているように見えるのは実力の成せる技であろうか。

 寺島しのぶが演じる女に翻弄されるアキヨシは柄本佑が担うが、同役は初演時、柄本明が演じた役である。勿論、それを知った上でのキャスティングであろうが、父子で同じ役を継承することになるとは粋な配慮である。

 アキヨシは、ポン引きの旦那のいるキャバレーホステスいちよに、毎月給料を付け届けている。ポン引きの旦那は田口トモロヲが演じていく。愛おしい、絆される、意地らしい、狂おしいなど、社会的枠組みとは大きく隔たりのある感情によって物語は紡がれていく。

 いちよに瓜二つのアキヨシの姉もろはが登場し、寺島しのぶがクッキリと両者の性格を際立たせ演じ分けていくのが見事である。しかし、時としてどちらともつかない表現を繰り出し、観客の脳内も徐々に攪乱させられていく。それがまるで謎解きの様にも感じられ、ついつい前のめりになってしまう。

 玉置玲央や池田鉄洋のエッジの効いたパワー満載の存在の在り方は、今っぽい洗練さとは確実に一線を画している。大仰な立ち廻りに観客も同化し始め、知らず知らずの内に観るだけで大いにストレスが発散出来ていくようなのだ。

 福原充則の作品に対するアプローチに、観る内に段々と嵌っていってしまう。初演時、本多劇場を水浸しにした嵐のシーンも、きちんと本水で再現される。自分なりの解釈を繰り出すのだという野心とは地平を異にし、唐十郎の戯曲を細大漏らさず表現しようという強烈な意思が作品にパワーを付与していく。故に、このスポットを押して欲しいというポイントを外すことがないため、観ていて実に心地良い。

 ある種の幻想の物語とも言える夢幻の世界を精緻に構築することで、フラットな現実世界に発破を仕掛けるパワー全開の佳品であった。アングラも継承していかなければ、その意気は途絶えてしまう。福原充則には、また、新たなアングラ作品を再生して欲しいと希望したい。


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