劇評18 

またもや異種混合精鋭部隊の見事な成果を成し遂げた宮本演出。
「キャンディード」




2004年5月5日(日)晴れ
東京国際フォーラムホールC 14時開演

作曲:レナード・バースタイン 
演出:宮本亜門 指揮:デヴィッド・チャールズ・アベル
出演:中川晃教、鵜木絵里、岡幸二郎、宮本裕子、
坂本健児、郡愛子、辰巳琢郎

場 : 開場15分後に着いたが、入口は長蛇の列。入場のさばき方が下手。
また、開演の時間表示はあるが、休憩・終演の時間表示はない。
終演時間を案内係の女性に聞いたところ即座に答えてくれた。
運営人員はアウトソーシングか?
人 : 女性が多い。また、入場料金が高いせいもあるのか、若い人は少ない印象。
ほぼ満席の状態。

 宮本亜門のキャスティングは「ユーリンタウン」に引き続き、またもや、実力あるアーティストの異種混合精鋭部隊となった。


 中川晃教の圧倒的なパワーがまたしても作品を活き活きと輝かせた。ナチュラルで感情がこもった力強い歌い振りは、ストレートに観客の気持ちに響いてくる。癖なく巧みに気持ちを歌に乗せることが出来る中川晃教のようなアーティストは、そうざらにはいない。


  鵜木絵里もまた、観客を驚嘆させる実力を遺憾なく発揮していた。特に、「着飾って浮かれましょ」のナンバーは圧巻。聞き惚れるしかないといった具合だ。


 他の出演者もそれぞれ強烈な個性を発揮するが、岡幸二郎が安定した力量を見せ、郡愛子のベテランの味わいが作品に奥行きを持たせた。坂本健児のナンバーが1曲だけであったのが少し残念だが、歌わないがゆえにかえってキャンディードと旅を共にする相棒としての存在感が浮かび上がった。


 ポップス、ミュージカル、クラシックなど様々な分野から集まったアーティストの競演は一見バラバラな印象も与えかねないが、この位実力が伯仲するとエンターテイメントとして何故か成立してしまうのだ。中川晃教と鵜木絵里のデュエットなどは、もう、本当にテイストの差異を感じてしまうのだが、“上手い”から現実が観念を超えてしまうのだ。


 中軸のキャンディードの存在感がぶれないので、目まぐるしく転換するそれぞれのシーンも、演出が意図するように回転していったのではないか。また、全員が良い意味で肩の力を抜いた変に気張らないスタンスなので、エンターテイメントとして十分楽しめる。宮本演出は、残虐な行為や悲しみもユーモアに包み、決して深刻になることなく「キャンディード」一種の寓話として成立させることに成功した。


 あらゆる遍歴の後、最後に辿り着くのは「愛」「家族」というメッセージも、時代を越え今2004年だからズシリとくるテーマである。照れることなく声高に歌い上げる大団円は圧巻。ミュージカルだから成し得るひとつの見本のような作品であった。


 最後にではあるが、バーステインの美しいメロディーに酔いしれたことを付け加えておきたい。いくつかのメロディーが、まだ、耳の中で木霊している。