FUTURE〜文筆家・勝沼紳一と企画者草川一が当て所なく繰り広げる四方山話〜

異文化コミュニケーション!?             2007年4月3日

知り合いの先輩がね、コンビニに飲み物を買いに行ったついでに、80円切手を5枚ほど、購入しようと思ってな。
ン? いきなりの展開だな(笑)。
レジのバイトの姉ちゃんに「封書用の切手を5枚ほど」と告げたら、「え?」って問い返されたんだと。
葉書や切手を扱ってないコンビニだった、チャンチャンとかいう下らねぇオチか?
アホ。そんな程度なら話題にしねぇさ。先輩は、相手に用件が伝わってなかったのかと思い、再度「切手。・・・・・・封書用の。5枚」と、まぁ、少し大きめの声で告げると、返ってきた答えが「封書って何ですか?」だった、というんだけどね。
は? 日本人かい、そいつ(笑)? 幼稚園のガキだって、普通、知ってるだろうが。葉書と封書って言葉ぐらい。
それそれ!! じつはその「普通って何か」って話をしたかったんだけどね。
普通は普通でしょ? ガキならガキ、大人なら大人。平均的に「わかってるはず」のことを言うんとちゃうかい?
それが通らねぇんだよ、近頃は。べつにネタでつなげるわけじゃねぇけど、俺もね、つい先日、タクシーの運転手のオッチャンに愚痴られた。大学生らしき客を乗せて走ってた時に、「次を左ね?」と言われて、なにげなく「ハイ。左折ですね」と受けたら、「は? 左だよ、左」と念を押された。「ええ、だから左折で」「ひ・だ・り!! わかんねぇのかよ。俺の言ってることが?」って急にブチ切れられたって(笑)。知らねぇんだよ。左折って単語を。この話、どうせ運チャンのネタだろうってその時は思ったけど、そうじゃねぇんだろうな。全国的に。義務教育プラス、おそらく高校三年間の合計9年も学校教育を受けてきたはずの、エエ歳した野郎が、「左折=左に曲がること」すらご存じないという・・・・・・この状況は、良く考えりゃ、笑うどころじゃなくて大いにゾッとするだろ?
よく考えなくたってゾッとするよ。同じ日本に生まれて、日本語喋ってて、いくら世代が違ったって、共通認識、概念が「おおよそ」持てるからこそ、会話がなりたつわけだけど・・・・・・。
そうそう。それがなりたたないことを前提にされちゃ、いちいちこっちは、「コイツ、この単語を知ってるかな? まさか知らねぇのかな?」と恐る恐る「あのさ」と切り出さなきゃならねぇだろ? 面倒臭い世の中だよ。
じつはね、俺もこの前、たまげた経験をしたんだよ。ある進学塾があってね。そこの学生講師たち数人を集めての飲み会に、たまたま誘われて参加したんだよ。最近の進学事情についての関心もあってさ。ま、俺の世代からすりゃ、その講師が教えている子供たちも、その講師自身も、自分の息子や娘も同然の年齢だろ? そしたらある講師が「近頃の子供の喋る日本語が、良くわからない」と嘆くんだ。「へぇー、たった数歳違うだけで、そうかね?」と俺が突っ込むと、「今の中学生達は、ウザイとムカツクとビミョウとカッタルイの、4単語だけで生きてるみたいなんです」との答え。ま、それはそれで、十分に俺にとっては面白いネタだったけど。そのあと、話題は最近の子供たちの好む音楽だのゲームだののネタに移り……。「最近何の映画を観た?」と俺が問うたら、目の前にいる6人の男女の全員が全員、「高校時代から数年間、一本も観てない」と答えやがった(笑)。
ほぉー、一本も!! 
たまたま理系の学生が中心だったこともあるのかな? と後で思ったけれど、小説にいたっては、「教科書で習った以外、自分でたった一冊も買って読んだことがない」と。
音楽のジャンルだけは、きっと、やたら詳しいんだろうなぁ?
そうでもねぇんだよ。もちろんi-podなどを携帯して、好きな邦楽、洋楽問わず、音楽を聞きまくってる学生もいるにはいるけど、「今の時代は、そういう興味が、かなり極端なジャンル分けされてる」んだって。つまり、ファッションに興味があるやつは、もうオタクというしかないほどファッションだけに精通していて、音楽は音楽、だから「おそらくこのメンツは、たまたま映画を観てない人間だらけでしょうが、そうじゃないジャンル分けの学生を集めれば、そりゃもうオタッキー的に詳しいんじゃないでしょうか?」って、冷静に語られたよ(笑)。「いや、そういうものじゃなくてさ、映画や小説なんて。もっと普通に観たり読んだり……。何もオタッキー的に精通なんてしなくていいんだよ」と噴き出しながら話しても、俺の、その「噴き出し方」の意味が、よくわからないらしく、ちょっと「おかしな空気」になっちゃったんだけどね。
べつに好んで観る観ない、というんじゃない。たとえば俺たちにとっては、それこそ常識のレベルの、かつての名作映画のタイトルですら、きっとそいつらはご存知ない?
その通り。ジェイムス・ディーンを知らねぇんだもん(笑)。呆れたよ。ネタでも何でもなくて「香水の名前ですか?」って女学生にマジな顔で訊かれたからね。「ローマの休日」も知らない。「風と共に去りぬ」も知らない。ジャンルを替えて、「もしや志賀直哉って作家の名前、知らない?」と問うと、みんなで顔見合わせて、「あ、誰だっけ?」「どっかで聞いたぞ」状態!! べつに俺は志賀直哉なんて、今さら決して小説の神様だとは認めたくねぇ人間だけど(笑)。そんなレベルの話じゃない。まともな大学生が、しかも小中学生に勉強を、カネ貰って教えている連中ですら、このていたらくだもんな。
俺の知り合いのウチの中学生が、高校受験を前に控えてなお、dogとbagの区別が付かないんだと知って、たまげたけれど、こりゃ大変な時代に突入してぜ、マジに。その中学生は、dとbの区別を「縦棒を中心にoが右に向いてるか左に向いてるか?」で認識しようとしてやがってね。英語を習いたての子供じゃないよ。高校受験を控えた去年の12月の話だよ?
なんでそういう阿呆が、高校に行こうと思うの? 中卒で働きゃエエじゃん。
そこだよ。とっくの昔に、そうはいかない社会構造になっちまってるからこそ、いろんな問題が溢れ出てくるんだろうな。
ふうむ・・・・・・。