◎ 2003年9月6日(土) 午後3時〜5時
 「独自の視点をもつということ」  写真家 高砂淳二氏
http://takasago.dnn.co.jp/


  [※ スライドを見ながらお話を聞くといったスタイル。]


〜  高砂氏のテーマ曲 〜

「オーバー・ザ・レインボー」 歌:イズラエル
高砂 「“ナイトレインボー”(6月出版の写真集)を夜な夜な探している時聞いていた曲です。歌っているのはハワイのイズラエルという歌手。ハワイの暖かい心が沁みてくる大好きな曲です。」
高砂 「私は宮崎県石巻市生まれで、海のすぐそばで育ちました。」
高砂 「大学進学の時、漠然と写真家になりたいなと思い、どういう進路がいいかと調べたところ電子工学科であろうという記事がありまして、宇都宮大学工学部電子工学科に入学しました。結局、写真とは全く関係なかったんですが…。そして、大学3年の時、休学してオーストラリアに行きパースという土地に落ち着きました。そこで、ある時ダイビング仲間の写真が売れたという話を聞いて、あっ、こういう仕事もあるのかと気付かされました。海、旅、ダイビング、自分の好きなものが全て叶う。この職業に就こうと決めました。」
高砂 「半年後帰国し、その後大学を卒業。そして、アルバイトをしながら夜間の写真学校に通いました。ある時撮りためていた写真をコンテストに応募したところ、入選しまして。勢いづいて雑誌社に売り込みを掛け、仕事に就くことが出来ました。」
高砂 「ある時ダイビング中、意識が朦朧とすることがあって、潜水学の先生に診てもらったところ「潜らない方がいいんじゃないか」と言われまして。その時は僕なりに愕然としたのですが…。そうなると会社も仕事を任せ難くなるかなと思い、辞めてフリーになったんです。その後、徐々に水に身体を慣らしていったのですが、結局、ダイビングをしても何ともなかった。今思うと、あの時の状態は何だったのかなと。」
高砂 「これは、セイシェルのバード島で撮った作品。自分が思ったことを撮るのが面白いので、これは、鳥のくっきりした影が面白いと思い撮りました。何かいいなと思うから写真を撮る。では何故いいなと感じるかを分析してみると、そこには必ず理由がある。次は意識してその興味を強調するように撮ってみる。すると自分が撮りたいものがだんだんはっきりしてくる。」
高砂 「好きな写真を真似ることで、それを撮ったところまでの知識は学べる。また、色々なものを見聞きすることと重なり、そこに初めてオリジナリティが現れてくる。それが、写真家としてのスタート地点かな。」
高砂 「イルカにある色々な能力のひとつに超音波がありまして、ジージーと音を発して返ってくる波動で相手を認識・確認するようなんですが、その超音波を砂に潜む魚に集中して発して、魚をしびれさせて食べちゃうみたいなこともしているようです。」
高砂 「警戒心があると普通の顔で接してくれない。自分は敵じゃないと安心させ、少しづつ近寄っていく。そうすると平穏な気持ちになってくれるみたいで、こういった笑ったような顔が撮れたのかなと。」
高砂 「楽しい気持ちでいると楽しい写真は撮れる。あまりガツガツしない。」
高砂 「何故、あほう鳥と呼ばれているかというと、人が近付いても逃げなかったため。だから人間は捕獲しまくって、絶滅寸前になってしまった。あほうなのは人間の方だったんですね。」
高砂 「お母さん鳥は魚だと思ってプラスチックのゴミを運んでくる。子供鳥は何も知らずに飲み込んでしまう。それが理由で死んでしまった鳥も、この写真のように身体が土に返った後も、プラスチックはこのように残ってしまうのです。興味は海、動物ときて、今は環境を危惧するようになってきました。」
高砂 「ハワイの先住民の教えを伝承しているカフナという人々の中にカイポさんという方がいらして、その方の教えなのですが、この世にあるもの全てに魂が宿っているとおっしゃるんです。石にも雷など自然現象にも魂は宿っている。石ころひとつとってもそこにあるのには必ず意味があるので、動かしたい場合は石に聞いてみる。そして、いいよというサインが出れば実行する。そういった自然観が失われてきていることが、環境を壊していくことに繋がっていってしまっている気がします。」
高砂 「ハワイの創生を語った「クムリポ」というのがあって、その中の一節で、陸と水中の生物はお互い補完し合い助け合って生きているのだと。例えばクジラと蔦(つた)とか。僕らがまだ分かっていない自然のつながりがあるのかもしれない。ハワイアンの知恵ですね。」
高砂 「カイポさんには、いろいろ教わりましたが、ある時、「淳二、夜の虹のことを知っているか」と聞かれたことがあったんです。その時初めて聞いたのですが、数日後、夜、車を走らせていると、夜空に浮かぶ虹をみることができたのです。それが最初でした。ハワイアンの間では夜の虹は先祖の霊が最高の祝福をしてくれているのだと言われていますが、僕も何か、見せられているというか、導かれているというか、そんな気持ちになってしまいました。また、火山溶岩を撮るのが目的でハワイ島に向かった時も、夜、車を走らせていて、フッと気になるところがあってそこまで引き返していったら、そこで、また、虹に出会いました。あー、ありがとう、と思いました。」
高砂 「何かに興味を持つということは、やってみなさい、もっと深く取り組んでみなさいというサインだと思うんです。気になることはとりあえずやってみる。人との出会い、感動した本、どれもが何かしら意味のあることなのだと捕らえていく。」
高砂 「次なる視点、興味の中心は、生き物とそのまわりのものとのつながり、人の心と身体とのつながり、そういったものを色々な場所で捉え写真に出来たらと思っています。また、先日、インディアンのシャーマンとお会いする機会があり、その方は僕を見て「虹のイメージがある」と言われました。その方を今度訪ねて行く予定で、そこで、また、何か新しい発見があるのかなとも思っています。」
 




Q.  本日の講義はいかがでしたか。ご感想・ご意見など。(抜粋)

「出会い」。出会うべくして出会ったと思う仲間、これからの出会い・興味あるものを大切にしたい
スライドにまつわる色々な場所の話が楽しかった
自分も写真をやっているので素直な気持ちで興味あること、楽しいと感じることに全力で進んでいきたい
高砂さんの写真は撮りたい物が明確と思う
優しい気持ちになれる
神秘的なのにすごい迫力と思った
高砂さんの視野の広さ 宇宙までも感じている所に驚いた
人間味ある話が面白かった
Night Rainbowは今までに無い迫力を感じた
こんなすばらしい世界があるのかと感動した
私自身ももっと広い視野で物事を見ていきたい
夜に虹がでるとはっ!!
スライドなのにそこに居るような感じがした
いろんな旅先でのエピソードが楽しかった
自然に波長を合わせ耳を澄ましていると自然の方から話しかけてきて、宇宙の仕組みを教えてくれるのだと知った
話を聞き、写真を見ていると向こうの世界が鮮明に浮かぶような感じがした
写真の楽しさが分かったようで、これからは写真というものに関わりを持っていきたい
南の島に行きたくなった
撮影の周辺の話が面白かった
是非、ハワイに行ってNight Rainbowが見たい
話を聞きながら写真を見るのは初めてだが、より分かりやすくて良かった
写真が動いているように見えた、きれいで心の中がすっきりした
高砂さんは写真家であり冒険家であり、自然・宇宙のウォッチャーだなと思った