FUTURE〜文筆家・勝沼紳一と企画者草川一が当て所なく繰り広げる四方山話〜

次の世代に伝承されていない日本文化 その参             2007年5月10日

前回の、より続く。
 
4月に公開された映画でさあ…。?
それ!! その話がしたかったの。「黄色い涙」のことでしょ? 同じ市川さんの書いた、同タイトルのNHKのTVドラマがあってね。倉本さんの「前略――」と同じく30数年前に放映されたやつ。おぼろげに、それを覚えてるけど、俺はむしろ脚本集で「黄色い涙」にハマったんだ。原作の永島慎二の漫画を、中学時代の恩師から頂戴していたこともあって、作品のテイストは良く知ってたけど、市川さんの書いたお話が、これはこれで、じつに上質の青春ドラマに仕上がってて・・・・・・。
森本レオや下條アトムが出てたよね?
そう。岸辺シローも良い味出してた。俺はこの「黄色い涙」のホンは、全話、ノートに書き起こして勉強させてもらった。青春モノの書き方ってやつを。主人公の売れない漫画家や小説家の卵、歌手の卵たちと一緒になって、俺も同じく卵で、志だけ高く(笑)。
それにしても、二宮君って、どうして「昭和の話」の主人公にもってこいなのかね? 倉本さんの作品もそうだし、この「黄色い涙」でしょ?
イーストウッド監督の、硫黄島の映画も彼でしょ? オジン心を惹きつける「何か」が彼にはあるんだろうなぁ。
「黄色い涙」には、他にも嵐の面々が出演してるけど、やっぱ、ジャニーズ事務所の若い連中は、みんな鍛えられてるね。
みんなプロもプロ!! SMAPにしてもそうだけど、バラエティでもドラマでも、彼らは安心して観てられるもんなぁ。ところでね、倉本聡の「6羽のかもめ」の最終回のタイトルがふるっていて、「さらばテレビジョン」。このドラマは小さな劇団とTV局の話なんだけど、実際にオンエア当時、視聴率が取れてなかったようで、それを逆手にとったんだな、倉本聡は。TVの視聴率競争が過激に進みすぎて、すべての番組が俗悪になり、苦慮に窮した日本政府は、国民の「これ以上の白痴化を防ぐ」意味でTV禁止令を出す……という内容の「劇中ドラマ」を制作する話。
あー、それ、観てるよ、たぶん。山崎努が出てた気が・・・・・・。
そう、山崎勉。たしか彼が作家役で、ラストの方で、画面に向かって怒鳴るシーンがあるんだよ。TVを金儲けの手段としか考えて来なかった連中は、「何年たっても決して、あんたたちはTVを懐かしんじゃいけない。『あの頃は良かった。今にして思えば、あの頃のTVは面白かった』だなんて、後になって言うな。お前らにそれを言う資格はない!! 懐かしむ資格のあるのは、あの頃懸命に、あの情況の中で、TVを愛し戦ったことのあるやつ。それからTVを愉しんだ視聴者だけだ」・・・・・・と。
でもそのドラマ、結局、制作中止になっちゃうんだよね?
そう。TVがなくなるドラマなんて、縁起悪くてTV局で流せるか!! と重役たちが怒りだして(笑)。
それがオチなんだね。
結局は、どんな敏腕のクリエーターも、資本を握ってる連中の「顔色」一つで右往左往させられる。時代が変わっても、その構図だけは何も変わらないんだね。気持ち悪いくらいに。
所詮、TVも出版も音楽も、文化である前に消費物だからね。売れてナンボ。
でも、飴玉作るのとは違うだろ?
一緒一緒。少なくとも、マスメディアの経営側の感覚は一緒だよ。
ううむ・・・・・・。むしろ、飴玉の方をありがたがるかもな。甘くない飴ってないからね。でもドラマや小説は、「面白いはず」で作ったはずが、結果、反吐が出るほど「つまんねぇ!!」なんて現実、ゴロゴロしてるし(笑)。