メル・ブルックスの映画作品がミュージカル化されるのは「プロデューサーズ」に続いてのこと。「ヤングフランケンシュタイン」は2007年に初演され、トニー賞にもノミネートされた作品だ。映画版は観ていたのだが、どのようなミュージカルになるのか全く想像出来ないため、観る前からワクワク感が募っていく。
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メル・ブルックス作品が、ミュージカル化される理由は何なのだろうか。アイロニカルな設定とブラックユーモアとの融合。そして、オリジナリティ溢れるヴィジュアル的な外連味がパフォーマンスの素材として打って付けなのかもしれないと思いを巡らせる。
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舞台のオリジナル版は未見であるが、本作は福田雄一の手により、日本人にも親近感を抱かせる工夫が凝らされているのだと思われる。福田雄一のシニカルなコメディ・センスは、メル・ブルックスとの相性も良かったのかもしれない。肩ひじ張らずに観れる、日本的なミュージカルへと「ヤングフランケンシュタイン」は変貌した。
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笑いの基軸を担うのはムロツヨシ。もはや、物語の展開とは直接関係ないアドリブとも思えるギャグを連発し、観客を大いに沸かせていく。少々、クドイかなとも思えるぐらいのインパクトを発していくのだが、やはり旬の御仁だけあって観客と舞台とを一体化させる強烈なパワーを発していくのは見事である。普段、舞台とはあまり縁のないであろう観客のハートもガッチリと掴んでみせる。
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小栗旬は、NYで脳外科医として名を馳せているフランケンシュタイン伯爵の孫フレデリックを演じていく。小栗旬が登場すると舞台から華やかなオーラが振り撒かれていくのは、スターが成せる技であろう。祖父が亡くなり城と遺産を継がなければなならなくなったフレデリックが、トランシルヴァニアに帰還することをきっかけに物語は大きく動き始める。
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登場人物たち全員がクレイジーなのは、メル・ブルックス印そのもので惹起してしまう。瀧本美織がトランシルヴァニアでのフレデリックの助手を演じるが、テンションが高まると何故かヨーデルを歌い上げるというのが奇想天外だ。ムロツヨシは代わる代わる何役も演じるという設定がそもそも面白く、役を演じるというよりもムロツヨシの七変化を楽しむという様な趣向が何とも楽しい。
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フランケンシュタイン家に仕えてきた、背中にこぶのあるイゴールを賀来賢人が演じるのは意外なキャスティングだ。しかし、美形を覆い隠しクセある役どころを嬉々として演じる賀来賢人は、コメディもいける抽斗を持っているのだと確信する。フランケンシュタイン家の家政婦ブリュッハー夫人を保坂知寿の、ふてぶてしさと可愛さとが相まった存在感は強烈だ。
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フレデリックが造形するモンスターを吉田メタルが担い、作品後半の物語を牽引していく。モンスターの動静が、他の人々に影響を及ぼすという儲け役をユーモアを持って演じインパクト大だ。フランケンシュタイン博士が登場するシーンは多くはないが、宮川浩は貫禄ある偉丈夫さでくっきりと博士の姿を印象付ける。フレデリックの婚約者エリザベスを瀬名じゅんが高飛車に演じる導入があることで、後に変転するエリザベスの二面性がくっきりと浮き彫りになる楽しみを観客に味合わせてくれる。
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福田雄一は日本の観客が喜ぶコメディのツボをしっかりと押さえながら、俳優陣のポテンシャルを最大限に引き出すことで、オリジナリティあるエンタテイメントを造形することに成功した。ミュージカルや演劇は苦手という人も、気軽に楽しめる作品を提供できる稀有な存在であると思う。
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