FUTURE〜文筆家・勝沼紳一と企画者草川一が当て所なく繰り広げる四方山話〜

抜きん出ない「真ん中」の魅力を守るも、戦略ありき          2007年7月9日

長く続いたものが、ある日、突然、何の前触れもなく「消えて無くなる」ことって、どう思う?
なんだよ、いきなり?
地元で三代続いていた有名なトンカツ屋がね、ある日、急に「休みます」と張り紙したまま、電話もFAXも通じない。中に人がいる気配もない。
ご主人が病気で急死したとか、……?
それにしたって、なんか我々に報告があって然るべきじゃないかい? こちとら、さんざん通ったんだから。旨いモノを喰わしてきた自負があるなら、店ェ畳むなら畳むで、「かくかくしかじかで……」とさ。
そりゃあ、まぁね。
今のご時世、トンカツだってカレーライスだって、大手の安価なチェーン店に押され、地元の「ちっちゃな」飲食店は経営が大変だよな。地代だって高いし、仕入れだって、「本物」にこだわりゃこだわるほど、自分の首を絞める結果になるし。でもさ、だからこそ、馴染みの客は、その店「独自の味」を欲して、わざわざ足を運ぶわけなのにね。あまりに幕の閉じ方に、情緒もへったくれもないのは、どういうんだろうね?
客の側の問題もあるね。キミの言う情緒なんて、はなから求めてない、必要としない連中がどんどん増えてるってことでしょ?
ふむ。そこそこの味で安けりゃ、どうせ腹に入りゃ一緒だし、わざわざトンカツごときにこだわるなんざ、それこそ「意味わかんね」つーことかいな?
でもね、「安けりゃ御の字」って連中は、まだいいんだよ。もっと救えない現象は、近頃、都内近郊にやたら目立ってきた、ショッピングモールという建物群ね。たしかに見かけだけは立派だよ。でも中に入っている飲食店は、軒並み有名チェーン店だらけ!! 他のどこでだって食べられる、べつに珍しくも何ともない味を、わざわざショッピングモールに求めて、どの店も延々行列が出来ちゃう。
地元のトンカツ屋も、夕飯時は結構混んでたんだよ。そこそこ旨いし。
そこだな、問題は。今時は「そこそこ」だったら、ショッピングモールの有名チェーンに負けるのよ。だってテキも不味くはないはずだから。
抜きん出て旨いか不味いか? とびっきり安いか超高価か? めちゃくちゃチープかゴージャスか?
勝ち組か負け組か?
巨乳か貧乳か? 関係ないか(笑)。
近頃は「山女、壁女」と言うらしいよ。
冗談はさておき、なんとなく今の世の中、○と×の「真ん中」の存在=無個性だと決めつける風潮が強い気がするんだけど?
どのジャンルも本物の目利きが減ったから、○か×か、際立ってないと評価しづらいんだろうなぁ。本当は「真ん中」には「真ん中」の魅力も面白さもあるのにね。